流華の楔
「あらまあ…」
芸妓は藤堂と和早を見比べて困惑しているようだ。
おそらく“誤った方面”に受け取ったのだろう。
「私は下がった方が良さそう?」
気をきかせたつもりなのか、いそいそと立ち上がろうとする。
「あ゛ー…」
「(藤堂さん…)」
いろいろな意味で失神しそうだ。
とりあえず彼を助けるべきだろうか。
「えっと、」
この芸者の名は確か――春乃。
「立たなくてもいいですよ春乃さん。私たちは衆道ではありませんから。…ね、飲みましょう」
表面上、自分は男だということになっている。
藤堂のこともあるが、新選組に妙な噂がたつのは避けたかった。
「いいんですか? 彼は本気かもしれませんのに…」
「いいんです」
ぴしゃりと笑顔で言い放つ。
ご愁傷様です、藤堂さん、という言葉を飲み込んで――…