流華の楔
自らに割り当てられた部屋に向かう途中、和早は違和感に足をとめた。
「……」
尾行……ではない。そもそも屯所内で尾行など馬鹿らし過ぎる。声くらいかけてもいいだろうか。
「新見さん」
「ああ、やっぱり見つかっちゃいましたね。鋭いな」
あはは、と笑う新見。
芹沢率いる水戸派の中で、和早が認めるたった一人の男。
「…話があります。あなたの部屋か、私の部屋に来てもらいたいのですが」
新見が小声で告げる。
ならば、と和早は自分の部屋に案内することにした。