流華の楔
面倒事に巻き込まれるのは御免だ、と傍観を決め込もうとした矢先。
「あ、」
小さな子供が、転がる蹴鞠を追っているのを横目にとらえた。
このままでは、ちょうど奴らの前に出ていく事になってしまう。
「止まれ、少年」
素早く少年の背後へ移動し、少年の胴に腕を回す。
「───!」
驚きに固まる子供。
鞠は道の反対側へ転がっていく。
「(──ぎりぎりか…)」
できるだけ顔を見られないよう、小さく屈んで少年を庇う。
「んだよ、つまんねぇな…」
通り過ぎる間際、そう聞こえた。
刀に手を掛けているのを見、助けて正解だったと安堵する。
「っと。すまないな、少年。ほら、鞠だ」
「あれ? お兄ちゃんいつのまにとってきてくれたの?」
「……い、今かな」
「すごい! 忍者みたい〜!」
「そ、そうか……?」
あはは、と空笑い。
正直、酔っ払い侍より子供の方無邪気さの方が怖かった。
「ねーねー、もういっかいやって〜!」
「あ、あはは……」
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