流華の楔
「……おーい、新崎?」
考え事をするとそれに集中してしまう癖があるようで。
和早は藤堂が覗き込んでくるまでずっと黙ったままだった。
「どうした、新崎?」
「あ……すみません、考え事してしまったようで…」
「いいよ全然。…あ、着いたぜ!」
外まで甘い香りが漂う甘味処。
藤堂はのれんをくぐり足早に席へとつく。
「こっち!」
「…あ、はいっ」
それにしても……周りは女性しかいないのによく入れるな、と感心した。女の自分でも少し恐縮しそうなのに。
「ご注文は?」
看板娘の若い女の子。
ついついたくさん注文してあげたくなるような可愛い顔をしていた。
「団子二本と、饅頭四個よろしく! あと茶も!」
「はいっ! えと…そちらのお侍様は…?」
「では、お茶をお願いします」
にこりと微笑むと、看板娘はぽっと顔を赤らめ「はいっ」と返事をして戻っていく。