流華の楔
子供に別れを告げ、教えられた場所まで来た和早は、小さな屋敷に目をとめる。
「ここか…」
『壬生浪士組』と書かれた看板を確認したところで、和早は門を潜ろうとした。
「………」
首に冷たい金属のようなものが触れたと感じたのは、その時だった。
「あんた、何者?」
「動けば斬る」とでも言うかのように、刀を当てられる。
「……浪士組に入隊したいと思いまして」
振り返って笑顔を向けると、刀の主は一瞬怯んだ様子を見せた。
「……それ、本気?」
形の良い眉をしかめながら、男は刀を納める。
その手つきが、相当な手練れであることを物語った。
「もちろん」
「そう。そういうことなら、話は別だね」
と言い、男は和早の手を取った。
「あの…」
「ついて来て貰えます?」
「あ……はい」
有無を言わさぬ物言いに、和早は小さく頷いた。
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