流華の楔
長州の陰謀
和早の兄だというあの男が、どうも引っ掛かった。
もちろん、告白を邪魔されたという私情も混じっているのだけれど。
上衣に印されていた家紋、どこかで見たような気がするのだが思い出せないのだ。
藤堂は、一人屯所に戻って以降悶々とそれを考えていた。
故に食も進まず、和早の言葉にも微妙にしか反応しないという珍光景が拝まれた。
夜になっても悶々から解き放たれることなく、時間だけが過ぎていく。
「新崎…新崎……んー…」
「……和早さんがどうかしたんですか」
「うわっ! な、なんだよ総司驚かすなよ……つか、ここ俺の部屋だし!」
いつの間に入ってきていたのだろう。…賊だったら死んでいたかも、と反省してみる。