流華の楔




悪いと思いつつ、和早の部屋の襖を少しだけ開けてみる。

気配はなく、当たり前だが姿もない。




「いない、か…」



そういえば夕食の時も姿が見えなかったのを思い出す。
定刻には必ず席に着く彼女がいないのはかなり珍しかった。



「藤堂さん…?」


不意に背後から声がした。

耳に心地好いこの声音。



藤堂は声の主を振り向いた。




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