流華の楔




藤堂が出て行った部屋に、いくらかの静寂が戻る。



和早は自身を襲った人物についてもう一度思い出そうと集中した。




「………」



真っ直ぐこちらに向かってきたのだから、辻斬りではないだろう。

誰かに命令されたか何かで送り込まれた刺客である可能性が高い。



それに、あの的確に急所を狙い間を空けず攻撃してくる独特の剣筋。





「長州の者か…」



認めざるをえない。
となると、雇い主は誰だという話になる。



「兄上……いや、桂か?」


頭のいい桂のことだから、兄や長州の足枷となる前に殺そうとしたとも考えられる。


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