流華の楔
それにしても、油断した。
比較的人通りが多かったからかもしれない。
だから、不穏な動きをする人物を把握することができなかったし、油断したのだ。
藤堂には怪我はないと言ったが、実は腕に浅い切り傷を負った。
「………」
それ程痛くはないが、慣れないことなのでどうしようかと悩む。
包帯を巻くとか、消毒したりしたいが、あいにく持ち合わせていない。
「どうするかな…」
そんなに酷くないからほって置いても良いかな、とも思うけれど。
「…適当で良いか」
「馬鹿野郎が。適当で良いわけねぇだろ?」
「…え」
新選組の男衆は突然現れるのが常なのだろうか。
土方の声がしたかと思えば、隣に姿があった。
「びっくりするじゃないですか…」
「うるさい。とっとと来い」
「……は?」
土方が和早の怪我をしていない方の腕を取る。
「ちょ…土方さん!」
そのまま立たされ、部屋を出た。