流華の楔
威圧的な態度にも怯まず、和早は小気味よく笑んだ。
「“こちら側”の人間だと言ったはずですよ?」
ああ、覚えている。
印象的で、忘れるわけがない。
それでも、心のどこかで不審を抱いてしまう。
「私の命は幕府のものであり、松平容保のものです」
「松平公の…?」
「はい。…簡潔に言いますと、あの人が私をここに送り込んだということです。視察という名目でね」
じゃあ何だ、最初からあの方の命令だからという理由でここにいたというのか。
お前の…
和早の意志ではなかったのか。
そう考えると、無性に笑えてきた。