さくら ―余命3年の恋―
リンゴの皮が床に落ちた。
仕方なく、「よいしょ」と拾い上げる。
───お母さんが、急な用事で千秋を私に任せて帰ってしまったのだ。
それで仕方なく、お母さんの代わりに「リンゴが食べたい」と言う千秋のために、不器用ながら懸命にリンゴの皮を剥いているのだ。
「…お姉ちゃん、手つきが危なっかしいんだけど」
「リンゴ食べたいんでしょ」
「皮剥いたのに、お姉ちゃんの血で赤く染まったリンゴは食べたくないよ」
…全く、失礼だ。
私だって、そんなヘマはしない。