僕とあの子の放課後勝負

階段を上がって左に曲がると、フローリングの床の部屋が三つ連なっている。手前は両親、間が妹。一番奥が、僕の部屋。
汚い、なんてものじゃない。水彩絵の具やら、筆とパレットやら、鉛筆やらキャンバスやらスケッチブックが散乱している。そう、お察しの通り、僕は美術部だ。

リモコンを拾って、エアコンを付ける。風に当たって、くわえたアイスが溶け出して、床に落ちていたスケッチブックに垂れる。アイスの甘い香りが部屋に充満して、エアコンの風が冷たくて、それで――

ここで僕は初めて、ぴるるるる、と鳴る携帯電話に気づく。僕に電話なんて珍しい。誰だろうか。

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