僕とあの子の放課後勝負

「…はい、もしもし」
「遅いよ、もうっ!」

電話に出た瞬間、部屋の空気が震えた。耳がキンとする。…葵だ。

「ごめんごめん、アイスくわえててさ」
「わかってるってば!ユウくん、子供のときから夏の夕方は毎日そうだったもん!」

どうやら、明日の放課後の予定が聞きたかったらしい。考えてみれば、メールでは駄目なのだろうかとも思った。が、葵がメールで満足する性格ではないこともわかっているので、スルー。


「悪い、明日は予定が…」
「…雨月さんでしょ?」
「…」
「…わかってるよ、ユウくん。明日は雨月さんとゆっくりしてね」
「はは…ありがとう。じゃあ、また明日」
「うん」

プツ、と電話が切れる直前の葵は、少し落ち込んでいたように思えた。

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