彼方ニ、跳ネル。
私は変な所プライドが高いらしく、この状況下で犬に諭されていることが堪らなく恥ずかしくなった。
落ち着け…
人間の知性を引き出せ紀奈子!
アイムポジティプガール!
「…ピョン吉は、どういう状況なのかわかってるの?つか何で喋ってんの」
「さあな。竜巻で飛ばされてどっかに落ちた事は確かだが、場所も事態もさっぱりだ。」
…ピョン吉、目瞑って話聞けばちょとカッコいいな。
仮にこれが二次元なら結構好きな系統だよ。うん。
「だから、ドア開けて見ろよ。危害を加えてくる様には見えねえし、状況を掴めないとどうにもならないだろ?」
「…そう、だね。」
落ち着いてみたら犬だって事実がもったいないなこいつ。
と、しょうもないことを考えながら、私は再び取手に手を掛けドアを開く。
「サンクス!オンナノコー!」
「オンナノコー!(合いの手)」
外ではまだ先程と同じ様に人々が騒いでいた。
出てきた私を見て、さっきの女の人が再度近寄ってくる。
「アナタの、名前は?」
「…あ、紀奈子、です…。」
「きな子ちゃん。」
この人、もしかして普通に喋れるの?
さっきから妙な掛け声ばっかりだから喋れないんじゃないかと思ってた。
「ありがとう。きな子ちゃんのお陰で私たちに平穏が帰ってきました。」
「え。」
「あなたは悪い魔女を」「あァァァァァ!!やっぱり私、人を殺めちゃったんだ!」
私の大声に、流石に皆も驚いている。
どうしようどうしよう。
我が18年の人生で、人の命を奪うなんてやる筈もない事だと考えてたのに。
嫌な予感がして家と地面の間を探ってみた。すると物語どおりの足が、挟まってピクリともせず…
「う~…」
いいことした、なんて思えない。
死なせた事には変わりない。