彼方ニ、跳ネル。



周りの下僕の人たちは皆、私を『いいから早く行け!』と言いたげに見ている。

これじゃ私が空気を読んでいないみたいだ。


そういう流れに弱い私は、渋々小さな声で『わかりました』と呟いた。





「―……で、きな子。それは何処に行く準備だ?」

一旦部屋に戻って支度をしていた私に、ピョン吉が尋ねてきた。

まあ仕方ないと思う。

服装はさっきの通り制服のまま。
鞄はスクールバックで、タオルとか着替えとか、あとは少しの単語帳を入れた。

「それはいつもの学校に行くときの格好だよな?」

「だって…私、基本的に学校と家の往復生活だから私服は本当によそ行きばっかりなんだもん。」

可愛い服は汚したくないし、かと言って家着はパジャマかジャージだけだ。

こんなファンタジーな世界をジャージで出歩きたくない。

「制服なら、シャツとスカートは予備あるし、着慣れてるし。」

体操着のハーフパンツ持って行けばパンチラ問題は防げるし。

「ならこっちの鞄はなんだ。今単語帳入れただろ。」

「今は一分一秒を争う時期なの!こうしている間にも他の受験生はどんどん私に差を付けて行くんだから!」

「…勝手にしろ。」

ピョン吉は呆れた様子で、鼻で笑ったように見えた。

そりゃあ、犬のピョン吉に受験の大事さが理解出来る訳ないけど…

小心者だから傷付くんだよ…


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