彼方ニ、跳ネル。
勿論、小心者はこんな急な冒険紛いの事なんてしたくない。
けど頼まれたり頼られたりしたら断れないのも小心者にありがちな気質。
そろそろ進まないと展開的にもグダグダになるし…
「何の心配してるんだお前」
「放っといてください…」
此処まで来たらもう引っ込み付かないんですよ。
「……ピョン吉、一緒に来てくれる?」
「まあ、俺も帰りたいしな。」
犬と言えど、その言葉は頼もしかった。
扉を開けると魔女達がまだ待っていた。
相変わらず下僕の人たちが『オンナノコー!』と不要な合いの手を続けているが、魔女は気にせず私に近寄る。
「きな子。貴方に餞別としてこの靴を。」
「……はあ……」
差し出された赤い靴には覚えがある。
確か潰れた悪い魔女が履いてたやつ…
「あ、あの…運動靴あるんで、大丈夫です…」
「なら、私からのキ」「ちょいちょいちょいちょい!!」
いくら頬と言えど!ファーストは!ファーストはちょっと!
ただでさえ近距離って苦手なんだから!
「あの、平気ですんで!頑張ってきます、じゃ!」
私は逃げるように、ピョン吉を連れて走り出す。
背後で下僕の人たちの『オンナノコー!』の合いの手が聞こえていた。