彼方ニ、跳ネル。
ガサ。
ガサガサ。
それはどうやら近付いてきているようだ。
姿は見えないが、鳥とも限らないし人かも知れない。もしかしたら危なげな動物かも――
ガサ。
ガサガサ。
「がおー!!」
両手を広げて高く上げて、分かりやすく猛獣っぽい声を上げて。
「……文化祭の劇?」
第一印象はきっと誰でもこうなる。
ただの、ちょっとライオンっぽい耳付パーカーを着た同い年くらいの男の子だった。
「……ぷっ。たてがみ無い」
「笑うな!俺だってたてがみ付いてるパーカーさえあればそれを買ったさ!なかったんだよ!」
男の子はあくせくしながら言い訳した。