ふたりごと
お店はとても賑わっていて、店員さんの元気な挨拶が私たちを迎えてくれた。
客層も学生から中年のおじさんまで様々な人たちがいるようで、なかなかの人気店だと見てとれた。
これだけお客さんがいたら、満席ではないだろうか…という私の不安は外れ、ちょうど個室が空いていたのかわりと静かな少しこじんまりした席へ案内してもらえた。
とりあえずビールと、オススメの天ぷらやおつまみを頼んで一息ついたところで、松崎くんが
「ちょうど空いててよかったです」
と、笑みを浮かべた。
「すごく人気なんだね。人がいっぱい」
サークルでよく利用するというだけあって、確かに学生グループも多くいるようだ。店のいたるところで若い声が騒がしいほどに聞こえた。
「そういえば、サークルって何に入ってるの?」
松崎くんのイメージで言えば…
書道部とか、弓道部とか、もしくはコーヒー同好会?
勝手に彼のイメージを作っていたけれど、彼は私が思っていたところとは全然違うサークルに入っていた。
「あれ?言ってませんでしたっけ…。山岳部です」
キョトンとして、彼は当たり前のようにそう答えた。
「えー!山岳部?意外かも…」
なんだか今日は意外なことが多いような気がした。
私の反応が彼にとっても予想外だったらしく、少し困ったような顔で首をかしげた。
「俺ってどんなイメージ持たれてますか?」
「なんていうかね、物静かで…。精神統一する感じ」
漠然としたイメージで言ったつもりだったけれど、松崎くんはそれを聞いて笑っていた。