ふたりごと
ベッドから体を起こしてサイドテーブルに置いていた携帯に手を伸ばす。
携帯には着信が残っていた。
大学時代の友達の、澄子からの電話だった。
ずっと連絡を取っていなかったけれど、大学時代は一番仲のいい友達。
私はすぐに彼女に電話をかけ直した。
コールが数回鳴ったあと、懐かしい澄子の声が聞こえた。
『あ…遥?もしもし?』
「澄子!久しぶり」
私は何年かぶりの澄子の声が懐かしくて、そして嬉しかった。
「着信見てビックリして……。本当に久しぶりだったから。澄子、元気だった?」
そう尋ねてみると、澄子も同じように電話越しでも分かるくらいに嬉しそうに笑い声を上げていた。
『めちゃくちゃ元気だよー!急に電話しちゃってごめんね』
「ううん。どうかしたの?」
『あー…実はさ、小耳に挟んだから…。あの話』
澄子の声のトーンが一気に変わった。
楽しそうな高らかな声から、悲しげな低い声へ変わったのだ。
「あの話?」
聞き返したあとに、私はハッと気付いた。
あの話って、まさか。
『カズと別れたって聞いて…』
やっぱり。
和仁との別れ話のことだった。
大学の仲のよかったグループの誰かに知られたら、こうして連絡が来ることくらいは予想がついていた。
思っていたより早かったのか、遅かったのか。
『絶対結婚するって思ってたから、ほんとに驚いたよ』
澄子は私たちのことを人一倍応援してくれていたから、余計に悲しくなったのかもしれない。
電話の声は心なしか震えているようにも聞こえた。