ふたりごと


私と松崎くんが会うのは、たいてい土日のどっちか。
私の仕事が休みなので、彼が合わせてくれるのだ。


この日は土曜日だから、街は人で溢れかえっていた。


お昼前に待ち合わせた私達は、まずは腹ごしらえということでランチをすることにした。


「何か食べたいのありますか?」


いつものように、松崎くんはそうやって私の希望を聞いてくれる。
私はたいてい答えられず、なんでもいいよ、と言ってしまうのだ。


「なんでもいい、じゃ困る?」


「うーん、正直ちょっと困りますね」


松崎くんは眉を寄せながらも笑みを浮かべていた。


「女の人って辛いものと甘いものが好きっていうイメージしかないんですよね…」


「確かに。外れてはいないかも」


「じゃせっかくなんで、辛いものでも食べますか」


結局、こんな感じで毎回彼に決めてもらうのだ。
ありがたいけれど、申し訳ないと思ったりもする。


今日はどんなお店に行くのだろうか。


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