ふたりごと


彼が連れてきてくれたのは韓国料理屋だった。
韓国料理が大好きな私としては、ちょっとだけテンションが上がる。


松崎くんはいつも美味しいお店を知っていて、率先して連れてきてくれる。


こういう人ってけっこうモテると思うのだけれど、大学やサークルでの彼はどんな顔を見せているのだろうか。


「スンドゥブチゲ、すごく美味しいですよ。オススメです」


なんてメニューを見る前から言っている。


「じゃあそれにしようかな。松崎くんって時々店員さんみたいなこと言うよね」


「え、そうですか?」


パチクリと目をしばたく姿が少しだけ可愛く見えた。


私たちは注文した料理がテーブルに届くと、「いただきます」と手を合わせて食べ始めた。


「辛いの平気なんだね」


パクパク食べる松崎くんにそう声をかけると、彼は笑みを浮かべてうなずいた。


「すごく好きなんです」


一瞬ドキッ、としてしまった。


辛いものが好きです、と言っているに過ぎないのに、「好き」という言葉だけを切り取ってしまった。


松崎くんは、和仁と真逆だな。
和仁は辛いものが大の苦手だった。


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