ふたりごと
登山靴を購入した私は、あんなに不安だった登山が楽しみで仕方なくなってしまった。
もちろん運動神経は良くないし体力だって無い方だと思うのだけれど、何故かとてもワクワクしてしまっていた。
「いつ、行きますか?」
松崎くんの問いかけに私は「え?」と彼を見上げた。
「登山。いつにしますか?」
「そうだね、いつにしよっか。私は今月は土日の予定特に入れてないんだ。だから松崎くんに合わせるから」
私が手帳を確認して返事すると、松崎くんはちょっと悩んでいるような顔で眉を寄せた。
「あの……迷惑じゃなければ明日はどうですか?」
「明日?」
土日休みなので、もちろん明日も休みだから私は特に構わなかった。
「明日でも大丈夫だよ」
「えっ、本当にいいんですか?土日両方、俺と過ごすんですよ」
「何かダメなことでもあった?」
松崎くんの反応が良くわからなくて、私は自分の返答がおかしかったのかと不安になり首をかしげた。
「いえ、ダメとかじゃなく」
慌てたように彼は即座に否定した。
「信じられなくて。2日連続で会えるなんて嬉しいです」
松崎くんの言葉で、私は自分の顔が赤くなるのがわかった。
どうして彼はこんな事をサラッと普通に言えてしまうのだろう。
私のような女と2日連続で会えて嬉しいだなんて、恥ずかしいようなこそばゆい感じがした。