ふたりごと


電車を乗り継いでたどり着いた登山道の入口。


すでに多くの登山者たちが入口付近に集まっていた。


入口からすでに坂道で、なかなかのコースのようだった。


私の不安を見抜いた松崎くんが


「大丈夫ですよ。初心者向けの山です」


と微笑んだ。


「うん、大丈夫。頑張ります」


「はい。一緒に頑張りましょう」


今度は松崎くんが登山のインストラクターに見えてきた。


ゾロゾロ歩き出す他の登山者の邪魔にならないように気をつけながら、私と彼は山へ進んだ。


雨なんて全然降っていなかったはずなのに所々登山道が湿っていて、滑りにくい靴を選んでくれた松崎くんに感謝した。


彼は私のペースに合わせて歩いてくれて、


「疲れた時は休憩できますから、言ってください」


と常に気遣ってくれる。


ややきつい上り坂を越えると少し平坦な道になり、またきつい上り坂が待っている。


その繰り返しのようなコースだった。


お年寄りの方たちもけっこういて、松崎くんが言っていた初心者向けというのがよく分かる。


途中まで話しながら登山していたけれど、だんだん疲れてきて私は無口になってしまった。


「西山さん、この先少し行ったところに開けた場所がありますから、そこで休憩しませんか?」


私の疲れに気づいて松崎くんが声をかけてくれた。


「じゃあ、そうしようかな」


登山を始めて1時間弱ほどのところだったので、私は彼の言う通り休憩をとることにした。


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