ふたりごと


10分ほど歩いた頃、彼が言っていた開けた場所というところへたどり着いた。


そこには水飲み場があったり、木造のベンチが並んでいたりして、休憩する登山者たちで賑わっていた。


「ここで少し座って休みましょう」


松崎くんに促され、空いているベンチに腰を下ろした私の口から思わず


「よいしょ」


と言葉が漏れる。


言ってから「オバサンくさいね」と自分で笑ってしまった。


「あはは、西山さんもよいしょとか言うんですね」


同じように笑う松崎くんは、リュックからお茶を取り出して飲んでいた。


私もお茶を飲みながらひと息つく。


「すごく疲れるけど、木のトンネルをくぐってるみたいで気持ちいい」


「そうですね。マイナスイオンってやつです」


「こんな世界、知らなかったな……」


私がそうつぶやくと、松崎くんが何かを言いかけてやめるのが分かった。


「どうかした?」


問いかけると、彼は慌てて首を振った。


「あ、いえ、今はいいです。また今度」


何を言いかけたのだろう。


そんな時、少し離れたところから声が聞こえた。


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