ふたりごと
また、朝が来た。
いつも通りゆっくり目を開けて、やっぱり隣には誰もいないことを確認する。
「だよね…」
つぶやいたと同時に、また涙が出た。
私の隣に、和仁がいるわけない。
彼の体温がどんなだったか、彼のキスがどんなだったか、彼の手がどんな風に私に触れてくれたか、その記憶だけはちゃんと心に残っているのに。
冷たい私の手を、彼はもう温めてくれない。
起き上がって涙を拭い、カーテンを開けた。
今日は昨日とは打って変わって、強い雨が降っていた。
ズキン、と頭痛が再発する。
雨の日は頭痛が激しくなるのだ。
ため息から始まる、私の長い一日。
仕事に行かなきゃ。
また今日を乗り越えなくちゃ。
私は暗い気持ちを押し殺して、さっき開いたカーテンを静かに閉めた。