ふたりごと


5分くらい歩いて、うっそうと続いていた森の終わりが見えた。


光が差し込む丘のような場所があり、休憩した場所よりも何倍もあるような広場。


頂上と書かれた古い木の看板があり、標高も示されている。


その看板の前で記念撮影している登山者たちが沢山いた。


そして丘の先には、広大な町が見下ろせた。


「綺麗だね……」


頂上にたどり着いて、喜びを分かち合うよりも先に景色に見とれてしまった。


ビルの屋上からだってこんな景色は見られない。


障害物が何も無いところから見る大パノラマが私たちを包み込んでいるような感覚になった。


「ここから見える夕日も綺麗なんですよ」


隣で松崎くんが指さす。


「あの辺りから日が沈むんですけど、幻想的なんです」


「見てみたいな」


「もし嫌じゃなけば、また一緒に来ましょう」


私は一瞬、松崎くんを目を向けた。


お互いに目が合った。


「うん。お願いします」


そう答えると、彼は心なしかホッとしたように微笑んだ。

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