ふたりごと
無事に下山することが出来た私に、松崎くんが改まったように
「今日は俺の趣味に付き合っていただいて、本当にありがとうございました」
とお礼を言った。
「私もすごく楽しめたよ。また来たいな」
また来たい、という言葉は私の口から自然に出た言葉だった。
自分の靴ひもが解けかかっている事に気づいて、私はしゃがんで結び直す。
そんな私に目線を合わせるように、松崎くんもしゃがみ込んできた。
「西山さん、このあともう少し俺に付き合ってもらえませんか」
「え?」
「大事な話があります」
まっすぐに私を見ている彼の目。
逸らすことも出来ない。
「…………はい」
私は静かに承諾した。
断ることなんて出来ない。
きちんと話をしなければならない時が来たような気がした。