ふたりごと
私が住んでいる部屋は、和仁と過ごした時間がとてもとても長い。
ソファやベッドも二人で使えるようにと大きめのものを買ったし、食器棚に並ぶお皿や茶碗、コップもほとんどペアのものばかりだ。
そういう物に染み込んだ思い出が、前は直視できないほどにつらくて悲しかったけれど、いつからかその感情は薄れていった。
どこにも行き場のなかった私の想いが、少しずつマイナスからプラスに変わったのだ。
松崎くんに出会ってから、彼と過ごす時間は思っていた以上に大切なものになっていたのかもしれない。
ずっとずっと読まないでしまい込んでいた、和仁からの手紙。
私はついに、その手紙を読むことにした。
チェストの引き出しを開けて、白い封筒を取り出す。
ここまでの動作は何度もやってきた。
今まで何度もこの手紙を読もうと思い、でも出来なかった。
きちんと読んで、和仁の言葉を受け止めようと決めた。
すでに開封されている封筒から、中身を出す。
手紙を開くと、懐かしい和仁の字が並んでいた。
彼の明るい性格を表すような、少し荒くて大きめの読みやすい字。
その字を噛みしめながら、読み始めた。