ふたりごと


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遥へ。


突然、手紙なんて送りつけてごめん。


メールにしようかとも思ったけれど、きちんと自分の字で伝えなければ誠意を見せられないと思ったから、手紙にしました。


2人で過ごした5年は、たぶんお互いにかけがえのない日々だったと思う。


俺はたしかに、君と一生を共に生きていきたいとつねに考えていた。
君も同じ気持ちでいてくれていると信じていた。


つらい仕事も、生活のためというよりは、君のために働いていたようなものだった。


疲れて家に帰っても、君が作ったご飯を食べれば元気が出たし、君の笑顔を見られれば疲れも吹き飛んだ。


君を絶対に幸せにしたいと思ったのは、嘘じゃない。


君が俺のために尽くしてくれていたことは、俺が1番よく分かっていたはずなのに。


本当に本当にごめん。


ごめん、なんて簡単な言葉では片付けられないことは十分承知の上だ。


でも今の俺には、謝ることしか思い浮かばないんだ。


君はあの時、俺ではなく自分を責めていたね。


それは違うよ。


全部、俺が悪いんだ。


君以外の誰かを本気で好きになってしまった俺が悪いんだよ。


いっそのこと俺を責めてくれていたなら、少しは心が軽くなったかもしれない。


君のことだから、いまだに自分を責めているんじゃないかと心配になる。


もう俺には心配する資格なんてないのに。


君の涙が、忘れられない。


忘れられないけれど、俺は君を救い出すことはできない。


ごめん。


これ以外の言葉が思い浮かばない。


最低な男だと恨んでください。




俺は君を幸せにすることはできなかった。
だから、必ず誰か違う人に幸せにしてもらってほしい。


都合のいい考えで申し訳ない気持ちでいっぱいだ。






遥、ありがとう。


こんな俺と5年も付き合ってくれて、本当にありがとう。


だけど俺はたしかに、君のことが好きだった。
愛していました。





もう二度と部屋に行くことはないから、鍵を返します。




ごめん。


さようなら。







和仁


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