ふたりごと


混雑しているホームを抜けて、構内にある空いているベンチを見つけて私と彼は座った。


彼はすぐにいなくなり、ペットボトルの水を買ってきてくれた。


「もし、よかったら」


そう言って差し出されたので、私は一瞬迷ってから


「ありがとう。すみません」


とペットボトルを受け取った。


「体調、大丈夫ですか?」


彼はまっすぐに私を見て尋ねてきた。


その濁りのない目は、若さ故なのかそれは分からない。


でも、この人にこうして見られたら、きっと嘘をつけないんだろうなと思った。


「ここ最近、頭痛がひどくて。今日は立っていられなくなってしまいました…」


「そうですか…」


私の言葉を聞いた彼は心配そうな表情をして、


「満員電車だと余計にひどくなりそうですね」


と苦笑いした。


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