ふたりごと
このメモは、彼が去り際に私に渡してきたのだ。
「やっぱりお礼、してもらえませんか?そうだな…、コップ一杯の水でもおごってください」
そう言って笑った彼の表情は、どこか大人びて見えた。
メモを開いて、彼の名前をつぶやいた。
「マツザキショウジ」
松崎昭治。
その名前はキチンとした字で書いてあり、なんとなく彼の性格が伺えた。
メモを枕元へ置いて、私は真っ白な天井を見つめた。
いくら体調が悪いとはいえ、こんな私でも誰かの目に留まることがあるんだな。
ちっぽけな私。
ただ泣いているだけの私。
私の存在価値って、どこにあるかな。
答えなんてないのに、いつまでも考えてばかり。
私はベッドの上で寝返りをうって、目を閉じた。