ふたりごと


誰かに携帯で電話をかけるのは久しぶりだった。
ここ最近、携帯で誰かとやり取りをした覚えがない。


大学の時の友達にはあまり連絡をしたくなかった。


和仁とは大学で出会い、付き合うようになった。


だから大学時代の友達は、みんな私と和仁のことを知っている。


別れたことまでは知らないかもしれないが、「いつ結婚するの?」と聞かれたりしたらたまらない。


しばらく連絡は取らないつもりだった。


ぼんやりそんなことを考えていたら、ずっと鳴っていた電話のコールが途切れて、聞き覚えのある男の子の声が聞こえた。


『はい。もしもし?』


電話越しに聞くと、実際に聞いた時よりも少し低い声に感じた。


出ないかもしれないと思っていたので、意外な気がしながらも私は名前を名乗った。


「西山遥です」


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