ふたりごと


コーヒーを注文したあと、彼は私の顔をまじまじと見つめてきた。


あまりに見られるので、顔に何かついているのかと心配になる。


私が戸惑っていると、彼はやや顔を傾けた。


「前より顔色はいいですね。あまり元気はなさそうですけど」


「私、もともと根暗なの」


「根暗には見えませんよ」


会って間もない人に、私の何が分かるのだろう。


でも、こんな考えを持っている時点で私はおかしいのかもしれない。


和仁と別れて、人として大切な感情がなくなってしまったのかな。
それともその感情を忘れただけなのか、それすらも分からない。


「松崎くん」


私が彼の名前を呼ぶと、彼は一瞬ビックリしたような顔をしてから「はい」と返事をした。


「あなたは、どんな人ですか?」


なんてぶしつけな質問。
自分で聞いておきながらそう思った。


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