ふたりごと


話題になっている洋画を見ることにして、混雑している館内の席に着く。


上映時間まで、まだ少し時間がある。


隣同士に座ってから、私は松崎くんの顔を見つめた。


やがて見られていることに気づいたらしく、彼は不思議そうに首をかしげた。


「どうかしたんですか?」


「松崎くんって、彼女いないの?女の子には苦労しなさそうだなって思って」


「彼女?」


彼は私の言葉に驚いたように目を丸くしたあと、吹き出すように笑った。


「いませんよ。正直、まったくモテたことありません」


ほんとかな。
こんな風にさりげなく映画なんかに誘ったりする人、なかなかいないと思う。


こういう男の子は、大学生で若いならなおさら同じくらいの年代の子と盛り上がりそうな気がするのだけれど。


< 48 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop