ふたりごと
和仁が今愛しているその彼女は、どんな顔でどんな性格で、どんな風に彼と愛し合っているのか、そこまで考えたくなかったのかもしれない。
私はとにかく現実から逃げてばかりいたから。
「別に好きな人の好きな人を、好きになる必要はないですよね」
不意に松崎くんがそうつぶやいた。
「え?」
ちょうど私も映画について考えていたから、少し驚いた。
私たちは映画を見終わって、ひとまず食事をとろうとカジュアルな雰囲気のイタリアンのお店に来ていた。
「あ、急にすみません。映画の話です」
彼は唐突に話し出して申し訳ないと思ったのか、そんなことを言っていた。