ふたりごと
振り向くのが怖い。
でも…。
私は思い切って後ろを向いた。
同じように隣にいた松崎くんも振り向いていた。
私たちの視線の先には、とても懐かしい人の姿があった。
和仁がいた。
彼は最後に私が見た姿となんら変わりはなく、やや戸惑ったように私を見ていた。
こんなに人がいっぱいいるのに、どうして私なんかを見つけることができたのだろうか。
そして、気づいてしまった。
和仁の隣には、私の知らない綺麗な女の人がいた。
きっと今の恋人に違いない。
小柄で綺麗で優しそうで、素敵な人だと思った。
「遥」
彼はまた私の名前を呼んで、ゆっくり歩み寄ってきた。