ふたりごと


振り向くのが怖い。
でも…。


私は思い切って後ろを向いた。


同じように隣にいた松崎くんも振り向いていた。


私たちの視線の先には、とても懐かしい人の姿があった。


和仁がいた。
彼は最後に私が見た姿となんら変わりはなく、やや戸惑ったように私を見ていた。


こんなに人がいっぱいいるのに、どうして私なんかを見つけることができたのだろうか。





そして、気づいてしまった。


和仁の隣には、私の知らない綺麗な女の人がいた。


きっと今の恋人に違いない。


小柄で綺麗で優しそうで、素敵な人だと思った。


「遥」


彼はまた私の名前を呼んで、ゆっくり歩み寄ってきた。


< 74 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop