ふたりごと


私は思わず松崎くんの表情を伺った。


松崎くんはあまり表情を変えずに、じっと和仁を見ているようだ。


「ひ、久しぶり」


何か言わなくちゃ、と私は当たり障りのない言葉を絞り出す。


ようやく話し出したから安心したのか、和仁は笑みを浮かべた。


「さっき見かけて、もしかして…って思って電話したんだ」


「そっか」


電話なんて、しなくてよかったのに。
思い出すからやめてほしい。


「お友達?」


和仁の隣で、彼の恋人が不思議そうに尋ねている。


「あぁ、うん。大学の時からの友達でさ」


そう答えを返しているのを聞いて、私は悲しくなった。


そう。
今は友達って言わなきゃいけない場面なんだ。
彼女が疑ったりしないように、不安にならないように。


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