ふたりごと





そのあと、松崎くんは和仁のことを詳しく聞いてきたりしてこなかった。


私と和仁がどんな関係だったのか、きっと予想はついていると思う。


私の忘れられない人が和仁であるということも、勘のいい松崎くんなら分かっただろう。


松崎くんが不機嫌になった理由は、私には分からない。


というか、分からない振りをした。
考えないようにした。


余計な期待や、余計な不安、余計な気持ちは今の私にはいらない。


考えることはとても疲れるからだ。






松崎くんは和仁たちと会う前の態度に戻って、いつもみたいに私に話しかけてくれた。


何事もなかったかのように。


どこのお店のコーヒーがおいしいとか、コーヒーの豆は何が好きかとか、そんな話。


彼はとにかくコーヒーが好きらしい。


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