ふたりごと
「西山さんの大学時代の思い出って、どんなものがありますか?」
彼の質問は、私にとってはなかなか答えにくいものだった。
大学生の時の思い出といえば、和仁と過ごした楽しい日々がほとんどだった。
何をするにも、どこに行くにも、彼と一緒だった気がする。
あんなにキラキラしていた思い出が、今は悲しい過去に思えてしまうなんて、別れというものはすべてマイナスに働くのかもしれない。
「楽しかったと思うよ。あんまり思い出したくないけど」
こんな答え方をしたら、松崎くんはどう思うかな。
偶然だけど和仁に再会したし、おそらく私の言葉の意味を彼も理解してくれると思った。
すると、
「今日、分かったことがあるんです」
と、ポツリと松崎くんがつぶやいた。
「分かったこと?」
なんのことだか分からずに、私は聞き返した。