ふたりごと
「俺は心が広い人間じゃないから、好きな人の好きな人を、好きになれそうにないです」
松崎くんは神妙な顔をして、なぜか落ち込んだような声のトーンで言った。
あぁ、そういえば前に2人で観た映画に、そんなのがあったっけ。
『あなたは好きな人の好きな人を、好きになれますか?』
そんなテーマの映画。
「そいつのせいで好きな人が無理したり苦しんでいることを考えると、やっぱり好きにはなれませんね」
松崎くんはまっすぐに私の目を見ていた。
彼が誰を好きで、誰を好きになれないのか、簡単に分かってしまうくらいの強い意思を宿した目だった。
目をそらすこともできなかった。