ふたりごと
窓際の席に座っていたので、ぼんやりと街を行き交う多くの人達の表情や雰囲気を眺めた。
身を寄せあって歩く恋人、仲が良さそうな大学生くらいの女の子達の集団、ベビーカーを押しながら歩く若い夫婦、手を繋いで歩く老夫婦…
数えればきりがない。
こんなにたくさんの人がいるのに、私はどうして和仁と付き合って、結婚したいとまで考えたのだろうか。
あの空っぽになったアパートの部屋で、私たちは何度も幸せな時間を過ごしてきたのに。
まさか別れることになるなんて思ってもみなかった。
平穏に見える街行く人たちの中にも、私のように好きな人に別れを切り出され、絶望している人はいるのかな。
絶望…。
そこまで考えて、思考は止まった。
私は…絶望しているのだろうか。
少し前に比べたら、底から抜け出せているんじゃないのかな。
ガラス越しに映る自分は、以前よりもまだマシになっているような気がする。
和仁が部屋を出ていってから、私は生活するのが苦しくて、どこにも居場所なんてなくて、誰にも必要とされていないと思っていた。
でも今は?
誰かに必要とされているのに、どうしていいか分からない。
必要としてくれているその誰かが松崎くんだとして、私は自分を必要だと言ってくれている人なら誰でもいいと思ってしまっていないだろうか。
そうだとしたら、私は…
とても、とても、寂しい人間だ。