年下の悪魔
「車の部品を作る仕事です。会社はまだ休みなんで小遣いを稼ごうかと…」

「へぇ、偉いね。お金貯めて彼女との結婚資金にするの?」

「俺今独り身ッスよ」

「あ、そう…」


元彼と一緒でずっと聞いてたい声。

いや、元彼の方がもっと低かったかも…。

っていうか…何でこんなに機嫌悪いんだろ?

やっぱりまだ気にしてんのかな?

5年前の事。









涼君が初めてこの店にバイトに来た時、私は涼君に告白されたのだ。

ただ、あの時の私はあまりに子供だった。


彼氏にするなら絶対年上がいいし、職場ラブとか苦手だし、そんな理由で涼君をフッたのだ。


そりゃ、冷たくされてもしょうがないけど、涼君は誰に対してもテンション低めだから、これが地なんだろうな。


「私もさ、一週間前にフラれちゃったんだ~。わがまま言い過ぎちゃって、愛想尽かされた感じ~」


とりあえず、まぁ、自業自得なんだろうけど沈黙は気まずい。


「じゃあ、お互い独り身ッスね」

「本当、淋しいよね」

このまま家に帰って独りになるのは恐い。

言い知れぬ孤独感、それに耐えられなくて押し潰されるのが恐い。

思い出したくないけど、あんたを最悪な理由でフッた事あるけど、今だけは会話して気を紛らわせたい。


「俺も去年フラれましたよ。何かもうしばらく恋愛したくない気分です」


「私もしたくないかな~」


「そう言いながらどうせイケメンの年上に口説かれたら行くんでしょ?ゆいさん、男が途切れた事ないイメージだし」


かっわいくない~!


「そんな淫乱じゃないわよ!」

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