放たれた小鳥
 その日からそのカフェは僕の行きつけの店となった。
 もちろんその理由は彼女ではない。ただ、居心地が良いカフェだな、と感じたから。
 パソコンを開いて座る僕にコーヒーを運んでくるのはいつも彼女だった。
 そのうち顔をお互い覚えるようになった。彼女は笑顔で話しかけてくるようになった。
 愛想はいいらしい。だが、気になるのはその表情だ。笑ってはいても瞳はどこか眠たげで、何にも興味がないように見えるのである。
 僕は少し面白半分で、彼女の観察をはじめた。

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