火の雨が降った後
微かに揺れる郡ちゃんの髪の毛に気づいた時、私の目から静かに涙がこぼれ落ちた。


分かっていたつもりだった。


私よりも郡ちゃんの方が、不安で怖くて仕方がないこと。


郡ちゃんが私に不安を与えたくないから、弱音を吐かなかったこと。


違う…。


きっと、それは郡ちゃん自身のためだ。


私が思っている何倍も、何十倍も郡ちゃんは不安でいた…。


死と隣り合わせの戦場へ行く恐怖。


私や両親を置いていく不安。


それを考えてしまうときっと耐えられないから、気丈に普段通りにしていたんだ…。


強いんじゃない、強くしてなきゃ過ごせなかったんだ。


郡ちゃんがゆっくりと崩れ落ちるように床に突っ伏していく姿を見て、私は初めて郡ちゃんがどれだけ耐えていたのかに気づいた。
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