火の雨が降った後
ギュッと握りしめられた両手を握り返した。


「郡ちゃん、ごめんね」


鼻をすすりながら郡ちゃんは首を横に振る。


「郡ちゃんの気持ち何も分かってなかった…。郡ちゃ…は強い…なんて…ってごめ…」


嗚咽が邪魔をして、上手く言葉にならない。


小さく泣き声をもらしながら、郡ちゃんは首を横に振り続けた。


初めて見る男の人の泣く姿。


郡ちゃんの本心…。


私はそんな郡ちゃんの姿を目に焼き付けるように、止まらない涙を流し続けながら見つめていた。


「みっともない姿見せてごめんな」


どのくらいの時間だろう。お互いに静かに泣きながら過ごした後、郡ちゃんが体を起こしながら言った。


目はまだ赤く、恥ずかしそうに笑う郡ちゃんに抱きついた。


「郡ちゃん、大好きだよ」


首に回した手に力を込めながら言う。


「郡ちゃん…絶対生きて帰ってきてね…」


こんなことを今口にしていいのかは分からない。だけど、それしか頭の中にはなかった。


「必ず生きて帰るよ。生きて帰ってくるから…」


郡ちゃんの声がすごく穏やかで優しかった。


「ねえ郡ちゃん!帰ってきたら何がしたい!?」


腕の力を緩め、顔を覗き込むように郡ちゃんを見つめて聞いた。
< 15 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop