火の雨が降った後
「ははっ」


くしゃっと郡ちゃんが笑う。


え?私笑うようなこと言った!?


「やっぱり八重子だな」


「どういう意味?」


返事のかわりに優しい目で私を包む。


「帰ってきたら…コーヒー飲みに行きたいな」


コーヒー…。


「苦くて美味しくないって思ったけど、あれは結婚した記念の味だろ?だからさ…」


私の心を見透かすかのように、郡ちゃんは目を細めながら言った。


「分かった!指きりね。もしかしたらさ、次飲む頃には美味しいって思えるかもね」


小指を絡ませながらそう笑って言うと、郡ちゃんもくしゃっと笑顔を返してくれた。


郡ちゃん、私はこの時何か約束が欲しかったんだ。


先の約束があることが、私の支えになる気がした。


離れていても、同じことを考えてワクワクできることが、希望に変わる気がしていたんだ。
< 16 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop