火の雨が降った後
軍事郵便の郡ちゃんの字を見つめていると、ふとあの頃を思い出して口元が緩んでいった。


郡ちゃん元気かな?


ちゃぶ台の上に置いたハガキに手を伸ばした時、空襲警報が鳴り肩を跳ね上げて驚いた。


え…空襲警報…?警戒警報じゃないよね…?


朝、警戒警報が発令されていたが、よくあることなので大して気にしていなかった。


それが、空襲警報に変わった…。


ドクンドクンと大きく心臓が動きだす。


「空襲警報ー!空襲警報ー!お年寄りや子供はただちに防空壕へ避難して下さーい!」


突然すぎて固まっていたが、外から聞こえてくる声でハッと我に返る。


慌てて玄関に走り、防災頭巾をかぶって避難袋を乱雑に掴んで庭へ飛び出した。


私1人分の小さな防空壕にあと少しという時、私の足は止まった。
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