火の雨が降った後
郡ちゃん…郡ちゃん…!!


何度叩いたって消えるどころか広がる火。


地面に広がって行く火を踏みつぶしながら、郡ちゃんの言葉が頭に浮かぶ。


『帰ってきたら、この家で子どもたちを育てような』


燃えないで!燃えないでよ!!


「燃えるなー!!」


気づいた時にはそう叫びながら、縁側から部屋の中に飛び込んでいた。


居間の棚の引き出しを開け、束になったハガキを手に取る。


郡ちゃんからの軍事郵便、これだけは持って行きたい。


手の甲で涙を拭おうとすると、ずっと持ったままになっていたほうきが目に入った。


こんなので消えるわけない…。


部屋のももう火が広がり始めている。


本当に燃えちゃうんだ…。


郡ちゃんと過ごした思い出がなくなってしまうんだ…。


ほうきを床に落とし、涙を拭った。


…逃げないと…。郡ちゃんと約束したんだから、生きて郡ちゃんを迎えるんだ。


縁側は火が広がりすぎて出られない。お風呂の残り湯に頭巾を濡らして、玄関から出よう。
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