火の雨が降った後
転げながも必死に火を払う人。


焼夷弾が直撃したんだ。


恐怖心でいっぱいなはずなのに、どこか冷静に目の前の光景を理解する自分がいた。


右腕がなくなり、右半身にどんどんと火が燃え広がる。


ドクンドクンと心臓の音が体中に響きながら、速度を増していく。


呼吸が荒く小刻みになり、体が震える。


初めて感じる怖さなのに、目がそらせなかった…。


目の前で人が炎にのまれて燃えていく。


想像していた地獄はこんな所だ…。


目からボロボロと涙がこぼれ落ち息が苦しくなった時、私の右腕が引っ張り上げられた。


「八重ちゃん!!何してんの!?早く逃げなさい!!」


見開いたまま閉じなくなった目で、引っ張り上げられた腕から視線をたどると、裏に住むおばちゃんが立っていた。


「おば…ちゃん…」


見慣れた顔に安心して、張り詰めていた気持ちが切れ抱きついた。


「八重ちゃん、泣くのは後にしなさい!!ここにいたら焼け死ぬ!!生き延びてから思う存分泣くの!!」


声を上げ泣いていた私の頬を両手で挟み、真っ直ぐに目をむけ言うおばちゃん。


その目は真っ赤に充血していた。
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