火の雨が降った後
おばちゃんに手を引かれ、路地に走った。


さっきの人を振り返ると、地面から炎が立ち上るだけで、人間の姿は見あたらなくなっていた…。


俯きながら唇をギュッと噛み締めた後、顔を上げ真っ直ぐに前を見つめる。


逃げなきゃ。逃げて生き延びなきゃ…。


手首で涙を拭い、必死に走った。


どこへ向かうのかも分からない人の流れにのって。


走っている間も、空からはたくさんの焼夷弾が降ってくる。


道端には焼夷弾を直撃したのか、頭のない死体や半分燃えながら必死にもがく人が何人も、何十人もいる。


だけど、足を止めるわけにはいかない。


足を止めたら燃え移る、自分が死ぬ。


そんな恐怖心が体を埋め尽くしていた。


「おばちゃん!!もうすぐで大通りに出るよ!!」


狭い路地じゃ人の流れに逆らえなくて、逃げ道が1つしかない。


大通りに出れば、流れがいくつかに別れるしここまで人でひしめきあっていない。


希望が見えたような気がして、笑顔で後ろを振り返った。


え…?おばちゃん…?


さっき話したばっかだよね…。


すぐ後ろにいたはずのおばちゃんの姿が見えなくなっていた。
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